2022年4月のこととか

❒ 4月4日
月曜休み。西荻窪アゲイン。ピザが無性に食べたくなり、GINAへ。とてもとても美味しくて、リピ確です。お腹の具合が少し心配だったけれど、良いピザなので生地が軽くてさっくり食べられる。窯の炎がガーッと燃えているのが見えたり、吹き抜けの2階があったりして、解放感ある店内の雰囲気もいい。店員さんの感じもいい。店員さんのエプロンに、ピザ屋なのに「No Curry, No Life」と書いてあるのも面白かった。ランチタイムは、1000円でサラダとピーチティーも付いてくる。ピザにピーチティーという組み合わせは、他のお店でも見るし、割と一般的なんだろうか。ピザは本格的で美味しいやつが食べたいのはもちろんだけれど、高級ぶった食べ方はしたくなくて、気持ち的にはラフにムシャムシャ頬張りたい。なので、甘いピーチティーとのジャンクフード食べるみたいな組み合わせは結構好きだ。

また善福寺公園まで行って散策したかったけれど、生憎の雨と真冬のような寒さで断念。前回、物豆奇とどちらへ行こうか迷った喫茶店どんぐり舎へ。こちらもいい雰囲気のお店。結構長居する。西荻窪素晴らしい。今まで行った店全て当たりだ。西荻窪や阿佐ヶ谷辺りの空気感が好きなので、一度住んでみたいなあと思う。

夜、『オキュラス 怨霊鏡』を観る。よくできていてなかなか面白かった。寝。

❒ 4月9日
上野。動物園へ行きたかったけれど、数日前の時点で予約が完全に埋まっていた。またピザが食べたくなって、チロンボ・マリーナというお店に行くも30分待ち。じゃあパスタ、ということでエッコエッコというお店に行くも定休日。テレビ撮影のクルーのような人たちが店内にひしめいていた。仕方ないので、一度訪れたことのあるインドカレー屋ハリマ・ケバブビリヤニへ。安定して美味しい。

お腹いっぱいになったところで、上野公園をぶらぶらする。天気が良くてポカポカで気持ちがいい。夕方頃まで一通り歩いて、茶店探し。15分くらい並んで、珈琲王城へ入る。昔ながらの純喫茶な雰囲気。普通の椅子に長いこと座っているのが苦手なので、座席がソファーなのも嬉しかった。コーヒー飲んでダラダラして帰宅。

夜、『ウエスト・サイド・ストーリー』を観る。さすがスピルバーグで、めっちゃ映画だった。ドラマパートから歌とダンスパートへの移行が物語の進行をスローダウンさせることもなく、全ての要素が映画という巨大な虚構の中に"運動"として収まっているという感じがする。スピルパーグはどこまでも映画を信頼し、映画に取り憑かれ、映画を撮りたい人なのだな。Switchで『A Short Hike』をクリアして寝た。

❒ 4月13
起きてまず、収録したラジオの編集。適当に昨日の残り物を食べた。何にもやる気が出なくてダラダラ。スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観る。とても楽しかった。ドクター・ストレンジ(とピーター・パーカー)の迂闊さによって物語が展開していくところは「おっと」と思ったけれど、フィクションなんてそれでいいのだ。あらゆる悲劇と喪失を一身に背負う感じとか、かわいそうすぎる感じとか、今作で初めてMCU版のスパイダーマンが真の意味での「スパイダーマン」らしくなったのだと思う。それどころか、サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズや、マーク・ウェブ版『アメイジングスパイダーマンにおけるスパイダーマンヴィランの悲劇を纏めて掬い上げようとする脚本は「スパイダーマン(ヒーロー)かくあるべし」という矜持を示してみせていた。堕ちてしまいそうになる今作ピーター・パーカーを止めるのも、それぞれ似た痛みと喪失を経験した他のピーター・パーカーであるというのも感動的だった。責任とやり直しについての物語になっているところも今っぽくて良い。

夕方、久しぶりに運動した。夜、Switchで『Firewatch』を始めた。自然保護区で森林火災監視員として仕事をこなしていくうちに、不可解な事件に巻き込まれていくミステリー・アドベンチャーゲーム。孤独な森の中、連絡手段はトランシーバーのみで、そこでの会話のやり取りがポール・オースターの小説みたいで粋で良い。この調子で、短時間で終わるインディ・ゲームにちょこちょこ手を出してみようかなと思う。本読んで寝た。

❒ 4月16
なかなか起き上がれず、二度寝した。予定無し。適当に食べてから『コレクティブ 国家の嘘』を観る。近年観たドキュメンタリーの中では『イカロス』以来の衝撃的な内容。ルーマニア以外の国や、自分が今住んでいる場所で起こっているあらゆる出来事と似ているため、どうにも他人事とは思えない。ナレーションが多すぎたり、インタビューベースのドキュメンタリーが苦手なことも多いので、淡々と対象を映し出して映像で語るアレクサンダー・ナナウの手法も好みだった。

夕方、重い腰を上げて図書館へ。『いまだ、おしまいの地』『オープン・シティ』『アイロニーはなぜ伝わるのか?』『絶対に挫折しない日本史』を借りる。帰って軽く運動してから『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観る。テーマ性を前に出しすぎるのでなく、きちんとエンターテインメント作品として昇華しているのが良かった。それと同時に、モヤモヤ感の残るラストには「安易に消費させまい」という製作者側の意志も感じる。社会的な状況と風潮を反映して安易な"リベンジ"を提示して溜飲を下げさせるだけの作品には警戒してしまうのだけれど、この作品はもう少し深いところにあるというか、全体を通してそういう短絡的なところは感じなかった。個人への怨恨というよりもむしろ、作品全体として示されるのは、性暴力を容認してしまう社会構造への警鐘。キッチュでポップなプロダクションデザインも効いているし、あえてやっている(?)ようなポップソングの使い方もユニークで良い。

夜、寝るまでまだ少し時間があったので『イリュージョニストを観る。ジャック・タチが映像化を見送ったのも頷けるくらい哀愁が強い物語(他のジャック・タチ脚本、監督作品と比較して)。映像化するには、タチの等身大としての実感に近すぎたのかもしれない。主人公タチシェフと共に時代遅れになっていく芸人たち(道化師や腹話術師)の哀愁もまた凄まじい。明らかに実写のジャック・タチ映画の再現を感じさせつつも、アニメーションにしかできない表現も絶妙な塩梅で取り込んでいて、そのバランス感覚が素晴らしい。絵もとにかく美しくて引き込まれた。

行動していないので、引きこもり映画日記になってきた。少し歌って本読んで寝た。

❒ 4月20
起きて、ちょこちょこ進めていた『Firewatchをクリア。天気がどんよりで気分もどんより。こんな日は家にいるに限る。

ポンヌフの恋人』を観る。大胆なショットに大胆なモンタージュが格好良くて、映像も美しい。全体的に動きが多くて、躍動感溢れるアクション映画になっている。撮影のエスコフィエのカメラが映し出す夜の街が美しく、最初から最後まで絵になるシーンだらけ。

夕方、少し運動してから『ベルヴィル・ランデブー』を観る。バンド・デシネ由来のデフォルメされた絵と、独特の世界に引き込まれる。セリフは少ないのに細部まで作り込まれた雄弁なアニメーション。おばあちゃんが主役というのも良い。タフ過ぎるおばあちゃん達。ジャンゴ・ラインハルトジャック・タチチャップリンなど、数々の人物や作品にオマージュが捧げられ、随所に遊び心があるのも楽しい。あと、ブノワ・シャレストの音楽が良すぎる。この世界観にずるいくらいハマっているスウィング・ジャズを始め、サーフ・ロック風の曲から、冷蔵庫や新聞紙や掃除機を楽器として用いた曲など、バリエーションも幅広い。

❒ 4月23
午前中、3回目のワクチン接種。「Go To トラベル」やそれに類するキャンペーンが始まった時に必要になりそうな接種証明が欲しくて、2日前に近所の集団接種会場を予約していた。無事終わってマクドナルド。その後、古着屋に寄ってシャツを2枚買った。外は夏みたいな日差しと暑さ。古本屋に寄ったら、好きな漫画『永沢君』があったので買って帰った。

まだ元気だったのでギターを弾いて少し歌った。その後、『スポットライト 世紀のスクープ』を観る。社会派エンターテインメントとしての完成度が高く、とても面白かった。バディものとしても楽しめる。登場人物たちが、一部の個人の行いにとどまらず、あくまで組織的・構造的悪を暴いていこうとする姿勢は、この映画の最も強調して描きたかった部分なのだろうと思う。続けて『ブラディ・サンデー』を観る。今までに観た映画の中で最も恐ろしい映画のうちの一つだと感じた。ドキュメンタリータッチの生々しい映像によって、観ていると次第に作中の登場人物たちと同じ混乱の渦の中に巻き込まれていってしまう。明確に計画された暴力・悲劇も恐ろしいけれど、混乱の中でドミノ式に巻き起こっていく暴力と悲劇もまた恐ろしい。政治的な意図とは別に、群集心理の映画でもあると思った。

夕方頃からだんだん怠くなってきた。出前でカツ丼を注文。夜までダラダラ。熱を測ったら37.4度になっていた。3回目は特に副反応出なさそうだなという根拠のない思い込みがあったため「熱、出るんかーい」と思った。

夜、Switchで『Night in the Woods』を始めた。大学を中退した主人公のメイが、今まさに衰退しゆく田舎町ポッサム・スプリングに帰郷するところから物語は始まる。音楽も良いし、もう既にここ最近やったゲームで一番好きかもしれない。ダメ人間にはブッ刺さりまくるタイプのメランコリックな世界観とやさぐれたユーモア感覚。バカみたいな会話の応酬をテンポよく回していると、突然真理めいたパンチラインが飛び出してきたりするので、通り過ぎてしまった発言をもう一度見るために既に2周目に入りたい気分だ。ゲームを進めているうちに、どうやら現代的なメンタル・ヘルスをモチーフにした作品であることも見えてくる。可愛らしい絵柄でおもいっきり重たい現実を突きつけてくるので、その実、社会的で政治性も批評性も高いゲーム。そもそも舞台となる街が、例のラストベルトに属する場所なのだ。だいぶ長時間やってしまった。就寝。

❒ 4月27
午前中、用事を済ませてマクドナルド。お腹が空いていたので、ビッグマックセットのポテトをLサイズにした。無印と古着屋で服を一着ずつ買った。帰宅して『天国にちがいない』を観る。明確にアイロニカルな部分と、ジャック・タチ的なナンセンスな笑いが混じり合った自由な映画。実体験に基づく一人称エッセイ的な内容なのに、語り口には三人称的な距離感を感じるのも面白い。これは、コスモポリタン的な、あるいはどこに居てもストレンジャーであるという感覚を抱くエリア・レイマン自身の世界や帰属意識に対する距離の置き方を反映しているのかもしれない。

ワクチン接種後の腕の痛みが落ち着いてきたので、軽く運動した。『聖なる犯罪者』を観る。とても好みだった。とにかく映像が美しい。狂気的な主人公が私利私欲のためにカルト教団の教祖にでもなる話かと思っていたら、善と悪について考えさせられる思いの外真面目な作品。宗教と信仰心について扱っているが、中心的に描かれるのはあくまでも"人々の"信仰と行いそのものなのであって、全体を貫くトーンとしては、むしろ無神論的な質感を感じる。

❒ 4月30
11時頃やっと起床。桑田佳祐を膝枕する夢を見た。昨日の仕事中からずっと不調で元気がなくてイライラしていて、今日も起きた瞬間からそのテンションを引きずってしまっている。起きて食べて、少し歌った。布団にこもって『Night in the Woods』を進める。

おやつを食べながら『読まれなかった小説』を観る。やっぱりジェイランの映画は好きだ。同監督作『雪の轍』にはやや風格で劣るかもしれないけれど(ついでに『昔々、アナトリアで』の奥深さにもやや劣るかもしれない)、心血注いで書き、ようやく出版まで漕ぎ着けた小説を誰にも読んでもらえない主人公の切なさや、およそ他人事とは思えない家族との関係性には普通に感情移入してしまった。本作も例に漏れず映像表現が美しい。そして長い。

夕方、『トトとふたりの姉』を観る。ある意味同監督作『コレクティブ 国家の嘘』よりも衝撃的な内容。アレクサンダー・ナナウのドキュメンタリーマナーに則ってカメラは空気のようにその場に溶け込み、淡々と目の前の出来事を映し出している。ただそれだけなのに、残酷な現実と僅かに差す希望の光を「映画的に」捉えてしまう。劇映画の方が優れていると言いたい訳ではないけれど、まるでダルデンヌ兄弟の劇映画みたいだった。監督にカメラを渡されたトトの姉アンドレアが当事者として撮影した映像が効果的に挿入されるところなど、劇映画の演出以上にマジカルで同時に奥深い(フィクションではない"現実"というバックボーンがあるだけに)

夜、いつも通り本を読んで寝た。4月後半は調子が出なくてあまり行動できず、ほとんど映画鑑賞記録になってしまった。なんだか訳もなく気分が落ち込みがちな日々です。