2022年5月のこととか

❒ 5月4日
起床。昼前ごろ予約サイトを覗くと、明日集合予定の高崎の安くて良いホテルがキャンセルで空いていたので予約。今日から前乗りすることを決める。旅行自体決まるのが直前だったため良い宿泊施設がなく、前乗りしようか当日朝頑張って行こうか迷っていたのだ。旅行のメンバーは自分を含めて4人で、2人は既に宿を取って前乗り決定。もう1人は、日帰りで当日集合の予定となっている。

前乗り組は夕方に高崎駅に集合なので、慌てて宿泊準備。バスと電車を乗り継いで、17時過ぎごろに高崎駅到着。前乗り組の1人と合流。1時間後に来る最も遠方の友人には前乗りを隠していたので、合流時にプチサプライズ。2人でどんな反応をするか予想していたが外れた。

夕飯をどこで食べるか話し合い、ココスへ行くことに。前回もココスだったし、このメンツではココスへ行くことが定番になってきた。そこから割と近いホテルに友人2人は部屋を取っているため、先にチェックインをしに向かう。先にしておく必要もあまり無いのだけれど、ネットで見たところちょっと味のあるホテルだったので気になっており、見てみたかったのだ。外観は古いラブホみたいで楽しい。無人チェックインのため、自分も無事部屋へ進入成功。ところどころ古いけれど、寝られないことは無さそう。後で聞いたところによると、本当に昔ラブホテルだったらしい。

ココスで限定メニューのボリューミーな3段重ねのハンバーグや、いろんなものをシェアして食べる。デザートまできっちりお腹に詰め込む。自分は誕生月なので、無料で小さなケーキとアイスを貰った。しばらくダラダラして電車の到着を待つ。友人2人は高崎駅から徒歩圏内(そこそこ距離はあるけれど)の宿泊施設に部屋を取っている。自分は高崎駅から電車で2つほど先の駅にホテルがあるため、ここで一旦解散。

ホテルへ。部屋も広くて清潔で良い感じ。そわそわ過ごしているうちに夜中になる。あの2人なら絶対寝ていると思ったが、起きていたので電話を繋げて話しつつ就寝。

❒ 5月5日
9時ごろ高崎駅の老舗喫茶店コンパルへ。看板やメニューのデザインからショーケースの食品サンプル内装まで全てがハイセンス。レトロを意識したレトロじゃなくて本物のレトロ(リアルレトロ)。オリジナルデザインのマッチを貰えばよかった、と後で思う。先に来ていた友人3人と合流。芸術点の高い盛られ方をしたプリンアラモード、サンドイッチ、コーヒー、紅茶などを注文。素晴らしい。近所に欲しいお店。そして、閉店なんてしようものなら泣いてしまうお店。店主のおじいさんにも話しかけてもらえた。

バスの発車までまだ時間があったので、コンパルへ行く途中で見かけて気になっていた商店街を散策。昔からありそうなお店はほとんどシャッターが閉まっていて、その合間にかなりの数の風俗店が新規参入している。ピカピカの綺麗な外観で生気を放っているのが風俗店だけというのも、余計に一帯の物悲しさを際立たせている。後で調べてみると、やはり関東でも有数のシャッター通り商店街だったらしい。

高崎駅までいき、バス停へ。今回の旅行の主目的地である榛名神社を目指し、バスに乗る。1時間10分ほどの道のり。バスが榛名山を登る山道に入ったところで、もうテンションが上がってきた。幼少期や10代のころは、北軽井沢エリアによく行っており(夏休みなどは、始めから終わり頃まで滞在したりもした)、榛名山をよく通っていたため、この山道が原体験のようなものになっている。海にも毎年行っていて、毎回必ず泊まっていた海の家での交流や体験の思い出も濃いけれど、気がつけば圧倒的な山派になっていた。榛名神社へ到着。まさに"聖地"といった感じのピリッとしたいかめしい自然の中にあって、弱り気味だった心に活力をもらった。来て良かった。結構な距離と勾配のある参道を歩いて参拝。社殿も美しいけれど何より、大きな杉の木立、大きな岩や崖に圧倒される。本社が改修工事中なのはちょっと残念だった。帰路でお茶屋さんに寄って一服。味噌こんにゃく、梅干し、サイダー、アイスなどを摂取。そのまま近くの蕎麦屋へ入って山菜天ぷら蕎麦、鰯の塩焼き定食などを食べる。

またバスへ乗って、今度は榛名湖を目指す。到着。デッカい水。ヒルボートに乗りたかったけれど、何しろ広いので帰りの時間までに戻ってこれなくなってしまうかもしれない。そこで目をつけたのが「快速艇レッドシャーク」といういかしたネーミングとビジュアルの運転手付きモーターボート。これが、"快速艇"の謳い文句通り髪の毛も吹き飛ばんばかりの超ハイスピードで走行するので、興奮してみんなで「whooooo!!」と雄叫びを上げるほど楽しんだ。所要時間10ほど。降りてしばらく湖周りを散策。遠目にたぬきのようにも見える毛がふさふさの、顔の平たい魔猫(ちょっとクルックシャンクスみたいな感じ)を追いかけたり、写真を撮ったりして過ごす。

バスに乗って高崎駅へ。少しお土産を見てからみんなで電車に乗って、それぞれ乗り換えの駅で降りてお別れ。途中までとはいえ、帰りの電車までみんな同じなのは嬉しい。

❒ 5月7日
夜中までラジオ収録していたので、ゆっくり起床。編集してアップロード。ほとんどそのまま使っているだけなので、編集作業なんてほとんど無いのだけれど。楽しかった旅行の反動か、無気力な日。『ピアニスト』を観る。ハネケらしく最高に嫌な感じだった。おそらくハネケの目論見は大成功している映画なのだと思う。イザベル・ユペールすばらしい。

夕方、うたた寝して軽く運動。『クライ・マッチョ』を観た。良い意味でも軽い映画。牧歌的でスケールも小さいロードムービー。ここ最近、イーストウッドの撮る映画は思いも寄らぬものばかりで毎回驚かされている。

夜、『ムーンナイト』観た後に寝ようかと思っていたら、ラジオパートナーとタイミングが合ったので収録開始。真夜中に録って、終わってそのまま喋っていたら朝になっていた。

❒ 5月11
一ヶ月ほど前に怪我をして入院していた父の退院の日。午前中はその関係の手伝い。自分も事故に半分立ち会っていて、グロテスクな光景を見たり音を聞いたりしたので、ここ一ヶ月の間軽いトラウマになっていた。

午後は出かけて、高円寺へ。マクドナルド。ビッグマックセットにポテトLサイズが定番になってきた。一人の外食ランチはマクドナルドばかりで自分でも本当に芸がないと思うけれど、サクッと提供されてサクッと食べられて、安くお腹も満たせるし、何より美味しいのでついつい足を運んでしまう。レジに並ばず席でモバイルオーダーすることを覚えてからは余計に楽になり、待っていれば席まで持ってきてくれるのでちょっとしたVIP気分も味わえる。

食べてから古着屋散策。久しぶりに高円寺でガッツリ古着屋巡りをした。金欠気味で節約していたけれど、2着購入。休憩のため、茶店アール座読書館に入る。基本的に私語禁止のお店で、一人で来ているお客さんばかり。最初はこの雰囲気に慣れなくて、ちょっとガヤガヤしているくらいの方が良いなと思っていたけれど、慣れてくると落ち着き根が生えたように動けなくなった。席ごとにコンセプトの違う内装も楽しい。お客さんが自由に書けるノートが置いてあり、ちょっと不気味なものも見られる。かなり長い文章を書いている人も多くて、きっと特殊な客層に熱狂的に好かれているお店なのだなと思う。なんだかんだで2時間くらい滞在。暗くなってくると照明で店内が映えてもっと良い雰囲気になる。帰路に着く。

夜、ご飯食べてダラダラ。『ベター・コール・ソウル』観て、本読んで寝た。

❒ 5月21
起きたら雨がすごく降っている。雨粒が屋根や窓に当たる音を聞いて、弟がキーボードを早打ちしている夢を見た。近頃動き回っていたので骨休めの日にする。日常の記録を公開し始めると書きたくないことや書けないことは削ぎ落とさなくちゃならないので、リアルタイムではもう少し豊かに感じている日常が矮小化される感覚があって、少しモヤモヤするというデメリットもあるな、と思った。自分で読み返してみた時など特にそう感じる。

布団の中で『Florence』というゲームをやる。サウンドノベル(ただし、セリフや文章はほとんど無い)と体験型のアート作品の中間にあるような作品で、所謂ゲーム的な"攻略する楽しみ"みたいなものはないけれど、登場人物の心情や状況のメタファーとしてパズルが取り入れられているところなど、方式として面白いなと思う。グラフィックノベルを読んでいるような感覚にも近いけれど、あくまでも内容を"体験"として捉えてもらうことにこだわった、ゲームというメディアの幅広い可能性を感じさせてくれる作品。

食べたら眠くなってきてうたた寝。起きて『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』を観る。地味目な社会派作品だけど、しっかりと人間を描いていてさすがはトッド・ヘインズと思った。少し運動して『フォックスキャッチャー』を観る。スティーヴ・カレルチャニング・テイタムとマーク・ラファロの演技が素晴らしい。不穏で薄気味の悪い雰囲気も映画としては魅力的だけど、映画の後にNetflixで『フォックスキャッチャー事件の裏側というドキュメンタリーを観てみると、いくつか気になるところがあった。『フォックスキャッチャーでは、3人の人間関係からアメリカ合衆国そのものを描き出したかったから(?)だろうか、"父性による関係性のもつれ"を作品内にやや強引に持ち込んでいるようにも感じられたし、ナショナリズムやマザーコンプレックスに対する問題意識や同性愛的な暗示も少し安易に取り入れられているように感じる。ジョン・デュポンのキャラクター、パーソナリティも実際の方が狂気的かつパラノイア全開で興味深い。映画は映画であり、現実そのものとは違う。脚色や演出が入るのは当然だし必然だけれど、実話ベースの作品における事実と脚色のバランスについて改めて考えるきっかけとなった。

夜、ラジオ収録して就寝。

❒ 5月25
早めに起きる。マクドナルドへ行って食べて、そのまま1時間半ほど読書。図書館へ行って本を返却。『縁もゆかりもあったのだ』『母の記憶に』『批評の教室 チョウのように読み、ハチのように書く』『小説読解入門 『ミドルマーチ』教養講義』を借りる。近くの服屋で帽子とTシャツを買った。4月分の給料をまだ貰っていないので(もちろん5月分もまだ)、お財布の中身がだんだん寂しくなってきた。

15時くらいからカラオケへ。歌ったり、本を読んだり、うたた寝したりして過ごす。人と過ごすのも良いけれど、やっぱり一人というのも気楽で良い。フリータイムを利用して20時頃まで滞在する。帰宅してまた読書。ゲームしたり家でダラダラ。『アンダン』観て寝る。

❒ 5月28
朝早くから健康診断。何だか頭と体がだるくて行きたくない。行ったらあっさり30分くらいで終了。集団で皆同じ検査着を着ている感じにはギョッとする。身体測定をしたら、自分の認識している身長より少しだけ高かった。終わって近くの喫茶店に行こうとして店の前まで行ってみるも、タバコ臭かったのでやめる。特にやりたいことも行きたいところもないけれど、このまま帰るのもなんか嫌だなと思って道端で黄昏ていると、不動産屋営業の人当たりの良い青年に話しかけられる。営業を断って、勝手に雑談して「いい気分転換になりました!ありがとうございました」と、謎のお礼をして別れた。少し気持ちがほぐれた。

本屋に行って雑誌立ち読み。気になっていた千葉雅也『現代思想入門』と、数年前に図書館で借りて読んで、これは持っておきたいなと思っていた『暇と退屈の倫理学の文庫版が出ていたので購入。マクドナルドへ行って食べて、昼過ぎまで本を読みながらダラダラ。古着屋に行って冷やかし、古本屋に行って文庫の『プレーンソング』を買った。これも前から読みたかった本。外出すれば結局何かしらでお金を使ってしまう。

帰宅してちょっと運動して『スティルウォーター』を観る。主要キャラクターには比較的リベラルな人物が多く、人種やジェンダー面でもマイノリティにスポットを当てた映画が増えている中で、典型的な保守層のアメリカ白人男性労働者を主人公としているところにまずグッとくる。しかも余計な皮肉抜きに、想像力豊かにその人物像を描き出している。そんな無骨な主人公が、不釣り合いなマルセイユの街で奮闘する姿にはさらにグッとくる。なんて余計なフェティシズムを抜きにしても、とても良い映画だった。主人公のビルは一般的に(ほとんど偏見やステレオタイプとして)イメージされている保守的なアメリカ白人男性より多面性を持った人間として描かれており、マルセイユのリベラルな女性ヴィルジニーやその娘マヤと親交を深めていくところにも説得力がある。事実、特定の属性を持つ人々であっても、その考え方や性格はそれぞれ多種多様であるはずだ。そんな、全ての人間たちが当たり前に持つべき想像力を欠いた先に余計な分断が生まれるのだ、ということを改めて思い起こさせてくれる。