2022年6月のこととか

❒ 6月1日
起きて午前中に用事を済ませる。ビッグマックセットが期間限定で安くなっていたので、またマクドナルドに行ってしまった。その後、古着屋に2軒寄って、既に5枚くらいは持っていそうなカーキのベイカーパンツと、図書館へ行くときの本の持ち運び用に良いなと思っていたマリンストライプのトートバッグを買う。

ドトールへ寄って1時間くらい読書。夕方、帰宅してNetflixで『アポロ10 1/2 宇宙時代のアドベンチャーを観る。リチャード・リンクレイターの新作という割にあまり話題になっていない映画だけれど、ここ最近観たものの中で最も純粋に楽しめる映像作品だった。この時代の象徴的な出来事としての「月面着陸」よりも、どちらかというとテキサス州ヒューストン、NASAの近所という特殊な環境に住む子供達や住民の細かい日常をスケッチすることに比重を置いているのも面白い。

❒ 6月4日
4月分の給料がやっと入ったのと、楽天スーパーSALEがあったので、日用品をまとめ買いする。「これは散財ではない。賢い買い物だ」と思って心を落ち着ける。それ以外は特に予定も無し。家にいてダラダラする日。映画三昧することにした。

起きて食べて『MONOS 猿と呼ばれし者たち』を観る。衝撃的で異様な映画。これほど"ガチ"で架空の物語をやっている作品もなかなか無い。コロンビアの長い内戦を背景にして本気で『蝿の王』のような架空の物語をやっているので、登場人物の本名や性別やあらゆる背景が曖昧であり、寓話的であるにも関わらず、リアルで普遍的な現実世界の縮図になっている。イデオロギーを極力廃して、混沌と矛盾を徹底的に描き出す。そのこと自体が強力なメッセージになっている。

軽く運動して『30年後の同窓会』を観る。大好きな映画『さらば冬のかもめ』の精神的続編。スローガンとして仰々しく「反戦」を掲げるのではなく、あくまでも人間同士の交流を通して戦争の痛みと喪失をとらえる。ベトナム戦争からイラク戦争を通して変わらない国家のあり方や精神性、またその逆に簡単に変わってしまったもの。リチャード・リンクレイターらしく"時間の経過"を通して今の時代のあり方を問う。

夜、特にやることもなくまだ時間があったので『シェラ・デ・コブレの幽霊』を観てみた。色々な噂から、ひたすらぶっ飛んだホラー映像が続くのかと思っていたら、想像以上に物語のしっかりした探偵モノのホラーミステリーだった。というのも後で聞くところによると、元々はテレビシリーズにする予定だったらしい。怪奇現象に対する妙にリアリスティックな分析や視点が入っているところなどもまさに探偵モノといった感じ。不思議な映画ではあるけれど、少なくとも作品内容自体にはカルト化する要素があまりない。「最恐」と言われていたのは、手堅いドラマの中に登場する異様に派手な幽霊描写が印象に残りやすいからだろうか。時折、巧みなモンタージュやショットが見られるのも不思議な作品だった。お香焚いて寝た。

❒ 6月8日
西荻窪GINAへ。定番のマルゲリータと、ハムとズッキーニの乗ったピザを注文。やっぱり美味しいことを再確認。このお店のピザ生地とオリーブオイルの相性が抜群なので、結果何が乗っていても美味しい。

お腹も満足したところで、予約していた三鷹の森ジブリ美術館へ向かう。以前に一度訪れたことがあるけれど、大分前のことなので新鮮な気持ちで楽しめた。宮崎駿の「こんな美術館にしたい のことば通りの熱量と想いが伝わってくる充実した施設で、入場料1000円に対して得られる満足度がとても高い。また、5月からの新企画として『未来少年コナン』展が開催されていて、その創作過程を見ることができた。今回、何より嬉しかったのは、映像展示室「土星座」でオリジナル短編アニメーションを観られたこと。前回来た時は確か時間の都合で観られなかったのだ。現在上映しているのは『たからさがし』という、福音館書店から刊行されている絵本が原作のアニメーション作品。アニメーションとしての質はもとより、小規模だが設備と内装に抜かりなくこだわった劇場での映画鑑賞体験自体と、フィルム上映の尊さに胸を打たれる。全体を見て回った後、館内のカフェ麦わらぼうしで休憩。

夕方、井の頭公園を散策。初めて井の頭池のスワンボートに乗る。奥までガーッと漕いで、Uターンして戻ってきた。少し疲れた。ボートに乗ると、水鳥が目の前で見られるという思わぬ喜びも発見する。その後、ALTBAU with MARY BURGERというカフェでゆったり。ソファ席がたくさんあるという理由で選んだお店。いい感じ。夕飯時になってきたけれどお腹が空かないので、お茶を飲んでケーキを食べた。帰宅。

夜、『ストレンジャー・シングス』のシーズン4を見始める。

❒ 6月11
疲れていたのか、昼過ぎまでぐっすり寝ていた。でも寝汗をたくさんかいていて、スッキリ起床という感じではない。あと、首もすごく痛い。姿勢が悪すぎるのでよくあることだけれど、昨日から首が痛くて、寝て起きてみたら全然動かせなくなっている。食べて痛み止めを飲む。

何もする気力が沸かなくて、日中はひたすら布団にこもって『ストレンジャー・シングス』シーズン4をビンジしていた。新シーズンも相変わらずすごい吸引力で、グイグイ観てしまう。夕方、眠くなってきてうたた寝。夜、首の痛みがさっきよりマシになってきた気がしたので、軽く運動する。深夜、ラジオ録って就寝。

❒ 6月14
何もないのに珍しくかなり早く起きた。昨晩、急にカラオケに行きたくなった友達に誘われて、お酒を飲んで夜遅く帰ったので、二日酔いではないけれど体が怠い。それから、気温と気圧の乱高下が激しいからか(日によって最高気温に10くらい差があるのは暴力的です)、近頃心身共に調子が悪い。休みの日は途端に無気力になってしまうし、仕事中もなんの理由もなく落ち込んできたりして辛い。そして、これは一ヶ月以上前からだけど、毎晩動悸がするのも気になっている。

昼過ぎまで何もせずダラダラ。久しぶりにキムチチャーハンを作ってみたらとても美味しくて少し回復した。『6才のボクが、大人になるまで。』を観る。何だかちょっと嫌なタッチの邦題だけれど、映画自体は良い。リンクレイターらしく"時間の経過"に対して意識的に焦点を当てた作品で、映画内の時間の経過と同様に、実際に12年の歳月をかけて役者の変化をとらえているところなど、ある意味その作品群の極北にあると言っても良いかもしれない。当然だが、主人公メイソン以外の登場人物も同じく12年の歳月を通して変化していくので、さまざまな視点でも楽しめる。

❒ 6月18
11時頃起床。起きてからの体のだるさがここ最近で一番ひどいかもしれない。ご飯を食べ、また布団に戻る。縦になっているのも辛い。少し寝た。起きたら友人から夕飯を食べに行かないかという誘いが来ていたけれど、あまりにも頭と体が重いので断ってしまった。

何かしなくちゃと思い、布団から這い出て『フリー・ガイ』を観る。オープンワールドというゲームの形式を用いた舞台設定こそ現代的だが、王道のエンターテインメント作品になっているので観ていてむしろ懐かしさを覚える。そこで問われるテーマも「何を選択しどう生きるのか」という古典的なもの(「自由意志は存在するのか」という問題は今の流行りでもあるけれど)。また、ゲームの世界ははっきりと現実の社会に重ねられていて、登場人物たちもゲームの世界と同時に現実での"意志""選択"を問われていく。これは、ゲームの世界があまりにもリアルになり、現実に近づいてきているからこそ出来た話なのだろう。

夕方、また少し寝てしまう。夕飯を食べてから軽く運動したら血の巡りが良くなって少し調子が出てきた。常にこんな感じなら良いのに。短いアニメやドラマを観て過ごそうと思ったけれど、気力が湧いてきたので映画『次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家』を観た。このシリーズを観るのは久しぶり。なんとか最終回まで観たいところ。第六部は珍しくしめやかな回で、終始次郎長一家の誰かが泣いている。個人的にはあまり好みの回ではないけれど、全編を通して不思議な美しさがある。本読んで寝た。

❒ 6月22
8時半ごろ起床。朝から風呂場の天井の工事。一ヶ月以上前から天井からポタポタ落ちてきていた水がここ最近どんどん酷くなってきており、いよいよ業者を呼んで修理してもらうことになった。排水管の不具合が原因で、水漏れは何とか止めてもらったが、工事でぶち抜いた天井が半分以上無い状態なので、また埋めてもらうまで浴室は使えない。面倒な日々が始まるなぁと思って意気消沈。少し寝た。

16時丁度、ディズニープラスで配信開始した『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』を観る。内容の割に上映時間も比較的長くなり過ぎずに収まっていて、展開もスピーディーで飽きずに観られるものの、心に残る部分がほとんど無い。サム・ライミっぽいホラー演出とMCU的な演出がうまくマッチしていないように感じて、サム・ライミの映画としてもMCUの映画としてもかなり微妙だなと思った。めちゃめちゃ豪華で予算のかかったB級ホラー(しかしあまり面白くない)を観ているような感覚。

夕方、軽く運動。夕飯を食べて、寝るまでひたすら『Return of the Obra Dinn』をやって過ごした。『Return of the Obra Dinn』は、大ヒット作『Papers, Pleaseでも知られる天才的なゲームクリエイタールーカス・ポープが、4年半もの歳月を費やしてほぼ独力で開発したゲーム。プレイヤーは無人の状態で帰港した「オブラ・ディン号」に保険調査員として乗り込み、死の瞬間にアクセスできる不思議な懐中時計を駆使して得られる断片的な場面情報をもとに、約60名分の遺体の名前や死因を推理しなければならない。かなり難易度が高く地道な調査を強いられるゲームだが、この独特でダークな世界に引き込まれ、最近では仕事中もふとオブラ・ディン号のことを考えてしまう。プレイヤーは断片的な情報をもとに、メインのストーリーラインをはじめ、場面状況や事件の顛末などのあらゆる部分を自分で考えて脳内で補完していくことになる。そのため、例えば目立たない乗組員の心理や行動意図を読み解いて「こいつ実は隠れた英雄なのではないか?」と推測してみるなど、色々と想像を巡らせる楽しみがある。3Dでありながら1bit単色で表現されたレトロ調のグラフィックが美しく、音楽なども含め世界観が徹底的に作り込まれている。最近やったゲームでは、今のところ『Night in the Woods』に並ぶほど好きな作品。

❒ 6月25
朝早めに起きて準備して、アースレッドを焚いて部屋を出る。部屋の床板の一部が傷んで沈んでいて、そこに本のページの間にいるような白い虫(紙魚ではなくもっと小さい、1ミリも無いくらいのチャタテムシ)がわいていたのだ。2週間ほど前に駆除して以来部屋の中で一匹も見ていないけれど、湿度が異常に高くてカビやすく虫も出やすい部屋なので一応用心のため。昼過ぎに部屋に戻り回収。最近ちゃんと掃除もしていないので、片付けつつ隅々まで拭いて、掃除機をかけて床も拭いたら3時間くらい経っていた。かなり疲れた。

映画タイム。『ハズバンズ』を観る。家庭も社会的な地位もしっかりある男たちの「中年の危機」的な映画。主要キャラクター3人は、ホモソーシャルの悪い部分が表出しまくっていて、ミソジニーも全開であるのに魅力的に映る。優れた作家は、どうしようもない人物を良くも悪くも魅力的に描いて(描けて)しまうし、優れた役者は魅力的に演じて(演じられて)しまうのだ。却って今っぽいというか、今の時代的な視点で観るのも面白い作品だと感じた。

夕飯を食べて『ビフォア・サンセット』を観る。シリーズ前作の『ビフォア・サンライズがとても素晴らしくて逆になかなか観る気になれず、ずっと先延ばしにしていた作品。『ビフォア・サンライズから9年の歳月を経て、演技と会話劇はより奥深くなっている。リチャード・リンクレイターイーサン・ホーク、ジュリー・デルピーの3人が実際に同じ年月を経て経験を積んでいることが大きいのだろう。成熟してスレた2人の会話は駆け引きめいていて、本当のことを言っているのか嘘をついているのかも明確に分からないので、観ている側で推測しなければならない、という奥深さもある。基本的に『ビフォア・サンライズの撮影手法を踏襲しているが、ロケーションに対する撮影アプローチが前作の方が瑞々しくロマンチックで、心なしか映像的な面白さはやや欠けたような気がする。と、思ってしまうあたり、自分は結構ロマンチストなのかもしれない。今よりまだ若く夢見がちだった20代前半から、30代になり新たなライフステージを迎えた二人の境遇に沿うように、映像面でもより「現実的」になっている気がするのだ。

夜、『Return of the Obra Dinn』をクリアした。難しくて最後ちょっと力尽き気味だった。『ロシアン・ドール』観て寝た。

❒ 6月29
用事のため朝早めに起床。まだ6月だというのに暑すぎる。東京は5日連続猛暑日らしい(あと3日〜4日ほど同レベルの暑さが続くとのことで参っている)。梅雨もサクッと明けてしまった。生まれてこの方経験したことのない6月に体力の消耗が著しく、早くもバテ気味だ。どうなってしまっているんだ地球。

午前中に用事を済ませて、昼にマクドナルド。デパートへ行って、前に買って気に入っていた白Tをもう一枚購入。本屋へ行くと京都のお店のお香が売っていた。嗅いでみていい感じだったのでどれか買うことにする。庶民的なお値段のものの中から嗅ぎ比べて選ぶと、一番安価なものが残った。庶民中の庶民。暑いのであとはもう最低限の用事だけ済ませて帰ることにした。図書館へ寄って返却して、郵便局で払い込みを済ませて帰宅。友人が誕生日のプレゼントを送ってくれていて、開封してみるととても嬉しいものが入っていてアガった。

気合いの運動を済ませて『奇跡の丘』を観る。共産主義者無神論者のパゾリーニが「マタイによる福音書を忠実に映像化していることに特別な意味を見出したくなる。もしかすると、イエス・キリストの「反権威・反体制的な革命家」としての部分を強調したかったのかもしれない。エスの性質と生涯には間違いなくそういう側面があり、聖書を忠実に再現しているとすれば、パゾリーニのメッセージはより強固で隙のないものとなる。再定義せずに再定義をやる、というのは相当人を食っていてスマートでかっこいい。映画としては、冒頭のただならぬ気配を漂わせるシークエンス(ここが最も映画的な感じがする)と、磔刑の画的な美しさが印象的だが、全体に良くも悪くも余計な装飾が少ないので、そういった意味での面白みには欠ける。あくまで超人的に描かれるイエスには人間味も少なく、即物的な形式をひたすら連ねて出来たような作品になっており、それによって却って聖性を帯びているのが不思議な質感だった。選曲も不思議。

夜、『一心太助 男の中の男一匹』を観る。沢島忠×中村錦之助のこのシリーズ素晴らしすぎでは(以前観た『一心太助 天下の一大事』も超最高だった)。美しいショットが頻出するし、群衆描写もすごい。中村錦之助演じる太助と、中原ひとみ演じるお仲の溌剌さには心が救われる。ラストの餅つきシーン本当に痺れた。お香炊いて本読んで寝た。