2022年7月のこととか

❒ 7月2日
11時ごろ、上野へ。友人2人と合流。今日も猛暑日でめちゃめちゃ暑い。予約していた店へ入ってピザを食べる。普通に美味しいし店内の感じも良いけれど、大好きなお店に比べるとといった感じ。お腹いっぱいになったので良し。

13時に国立西洋美術館へ行く。「自然と人のダイアローグ」展。美術館に行くのは久しぶりなので不感症みたいになっていないか心配だったけれど、いとも簡単に見入ってしまった。実物の絵の良さを実感する。デジタル画像では実際の色味が分からないし、絵肌の質感やキャンバスの大きさによって受ける印象も全然違う。企画展をじっくり観て回った後、せっかくなので常設展も観ていくことに。こちらもなかなかのボリュームで、頭も足も既に疲れ切っていたので駆け足のようなスピードで回る。企画展は疲れていなければもう一周したいぐらいだった。かなり良い刺激になった。気になる作品がたくさんあったので、次はメモをした方がいいなと思った。こんな見方でも3時間ほどかかったので、休憩しながらもっとじっくり観て回ったら半日以上は過ごせそう。

美術館を出た後、とにかく疲れたので涼しい場所で休みたい。茶店を探し、アメ横を抜けてトリコロールというお店に入る。プリンが美味しい。友人たちとおしゃべりしつつ休憩。夕飯にはまだ少し早いため、上野公園へ行くことに。暑さも少しやわらいできたが、それでもまだ結構つらいレベルだ。ポートレートを練習している友人のカメラで写真を撮り合って遊んだ。みんなあまりお腹が空いていないし、焼き鳥屋でも行こうということに。調べて近くのお店に行くと、満席だった。仕方なく同じ建物内にある個室居酒屋に入り、色々食べたり飲んだりして、21時ごろ解散。

『ピースメイカー』観て、本読んで寝た。

❒ 7月6日
何時に起きたのか忘れた。とてつもなくだるい。予定のない休日が全てだるいのは、そろそろなんとかしたいところ。暇な人間がすることなんて映画を観る以外にない。『息子の部屋』を観る。とても良かった。物語は"喪失"から"再生"へと向かうが、ラストシーンで映し出される家族の複雑な視線とバラバラの足取りからも明らかなように、悲劇や大きな痛みはそう簡単に乗り越えられるものではなく「向き合って生きていくしかない」という人生のリアリティも絶妙な塩梅で提示している。

最近ハマっている中村錦之助版「一心太助シリーズ」の『家光と彦左と一心太助』を観る。既に観た同シリーズ作品(『一心太助 天下の一大事』『一心太助 男の中の男一匹』)と比べて最もコメディ色の強い感じだった。このシリーズで中村錦之助が家光と太助の二役を演じている理由がよく分からなかったが、本作では見事に脚本に生かされていて演じ分けの妙も味わえる。ラストの殺陣も素晴らしい。ストレッチして寝た。

❒ 7月9日
だるい。なかなか布団から出られない。癒しを求めて『Alba Wildlife Adventureという環境保護をテーマにしたゲームを始めた。地中海のとある小島を舞台に、プレイヤーは少女アルバを操作して野生生物と環境を守るために奔走する。一番大きな目的は50人分の署名を集めて、町長が進める島の自然保護区へのホテル建設を阻止すること。フィールドを自由に歩き回って、鳥の巣箱や壊れた所を修理したり、ゴミを拾ったり、野生動物を撮ってコレクションして動物のガイド看板を整備したり、様々な地道な活動が目的の達成へとつながる。手でゴミを拾えば動物たちが来てくれるようになるし、人助けをすれば署名がもらえる。ゲームだから当然かもしれないが、行動の積み重ねが全て善い結果に直結する感じがすごく楽観的だ。分かりやすい悪役として設定されているのも町長とホテルの責任者くらいで、島民はみんな良い人ばかり。現実世界の複雑性や混沌みたいなものがだいぶ薄められた世界なので、すれた大人には物足りない部分もあるけれど、子供も楽しめるものとしては良いゲームだと思った。フィールドグラフィックが美しく音楽も良いので、もっとイベントや遊び要素が充実していると嬉しいなぁと思う。

昼食べて『トラスト・ミー』を観る。ハル・ハートリー監督作品は初鑑賞。あらゆる意味ですごく不思議な映画だった。不思議だがリアル。もっと若い頃に観ていればもっと刺さったのかもしれない。最近、90年代感の強いものが段々きつくなってきている気がする。

夕方、運動をするつもりが、頭と体が重すぎて出来なかった。『江戸の名物男 一心太助』を観る。半分以上恋愛映画だ。これで終わり?って感じのラストだったけれど、中村錦之助はやっぱり良い。

❒ 7月13
なんだか梅雨に戻ってしまったような天気が続いていて、心身の不調に拍車をかけている。ここ最近、倦怠感が酷くて、休みの日はかなり頑張らないと布団から起き上がれないし、仕事もなんとかこなしているといった感じ。不調だけど約束をしていたので、昨日は仕事終わりに友人とカラオケに行って飲んだ。その疲れがまだ残っている気がする。しっかり寝たし、そんな程度の疲れは一晩で取れる体であってほしい。

昼過ぎごろ『パンチドランク・ラブ』を観る。ポール・トーマス・アンダーソン監督作品の中では比較的重要度が低いと思って後回しにしていたが、とても良かった。巧みすぎる撮影・編集を始め、映画の古典的な素養がめちゃめちゃしっかりした上で内容は奇妙なところなど、本作の前に撮られた『マグノリアに通ずる部分がある。映画としての土台がしっかりしているため、見たことのないような斬新なシーンもただ奇を衒っただけのものとは全然違う気持ち良さがある。ちょっと理解が追いつかない部分もある特殊なキャラクターに何故か感情移入してしまうところも『マグノリア』っぽい。PTAの映画にしてはかなり短い95分という尺も良い。この作品の後に、あの超ヘビーな『ゼア・ウィル・ビー・ブラッドを撮っているというのは驚異的。

夜は、恵比寿リキッドルーム踊ってばかりの国×THA BLUE HERBのツーマンライブを見に行った。この2組はどちらもハマり倒していた時期があり(もちろん今も好んで聴いているが)、自分の音楽観と価値観に多大な影響を与えてくれた存在だ。このヤバすぎる組み合わせは、絶対に目に焼き付けておかなければならないと思った。ライブは、THA BLUE HERBから。出順は後だと思っていたので驚く。「先なんだ」というフロアの声が聞こえる。完全に妄想だけど「俺先にやらせて」と言っている矜持全開のBOSSの姿が目に浮かぶ。熱くてすごく良かった。まだまだ最前線にいる唯一無二の存在。次に踊ってばかりの国久しぶりにライブを見たが、バンドとしてもはや円熟の域に達していると感じた。それゆえにまた少し距離も感じるのだが、それはそれで良いのだ。最後の踊ってばかりの国ILL-BOSSTINO30分間にわたるセッションは、どんな化学反応を起こすのか想像もつかない組み合わせながらバチバチにハマっていて、永遠に聴いていられるとすら思った。伝説級の一夜だった。こんなものは2度と見られないだろうし、出かけるのは大変だったけれど本当に来て良かった。終わって即帰宅した。

❒7月17
朝、「姿勢悪すぎだし、お腹出過ぎだね」と言われる夢で目が覚めた。姿勢が悪すぎるのはドンピシャで当たっているが、永遠に治せる気がしない。一度頑張って治そうとしたこともあったが、なぜか頚椎を痛めてしまった。もう永遠に猫背で生きていくつもりだけれど、そうするとお腹も目立ちやすくなるだろうし気をつけたい。もう全く何も気を使わずに健康や体型を維持できる年齢でもなくなってきているだろうし。見た目はどうあれ、健康はできるだけ維持していきたい。とりあえず運動した。

『ハードエイト』を観る。ポール・トーマス・アンダーソン本当に長編1作目かと疑うほど渋い内容。しかも当時26歳。内容としては序盤の期待を大きく上回るものではないけれど、全体に未熟さや稚拙さが全く感じられないのが驚き。

昼食べて『オールド・ジョイ』を観る。初ケリー・イカート作品。2人の男と1匹の犬による旅に、不安と不穏と緊張がべったりとつきまとう。というわけで、全く心置きなく楽しめる旅ではないようだが、彼らの行き着く先には確かに一時の癒しがあった。力強く確かなショットの連なり。潔いくらいにそれ"だけ"で出来上がっている映画だった。車窓の映像が美しくて何度もウトウトしてしまった(車に乗って外を眺めていると眠くなる例のやつ)。

夜、近くの映画館まで歩いてレイトショーの『エルヴィス』を観に行った。約160分間、ものすごい密度とスピード感で、ほとんど緩むことがない。すごく好みだと言える自信はないけれど、グリッターな画面とあまりにも大仰な演出・編集に笑いながらとても楽しく観ることができた。案外、エルヴィスという存在を描くにはこのスタイルがマッチしていたように思う。(主に音響面で)劇場で鑑賞して本当に良かったと思える作品。帰宅して寝た。

❒7月25
14時半ごろ、急遽上野へ。友人と合流。ハンバーガー食べたいモードだったため、Craft Burger & Grill JIROへ向かう。ボリューミーでポテトも美味しかった。店内で、欲しかったラルフローレンのシャツを友人に貰う。その後、古城へ。宮殿風の内装のレトロな喫茶店喫煙可の店なのでにおいはあるけれど、ドカっと座れるゆったりとしたソファは居心地が良くて、少しうたた寝してしまった。店員さん達の服装が、これでもかというくらい私服なのもなんか良かった。持ってきた漫画を読んだり、いろんな話をして過ごす。その場で読ませてもらった友人おすすめの漫画があまりピンとこなくて、そのことを伝えた。勝手だけど、そういうことを遠慮なく伝えられるのは良いなと思う。隣の席の男女は中動態の話をしていて、なんか東京の喫茶店っぽいと思った。『海が走るエンドロール』という漫画を借りた。

夕方から夜にかけて、上野公園を散策。たくさん歩いた。昼ごはんも遅めだったしお腹もそこまで空いていなかったので、焼き鳥屋さんに入る。ちょこちょこ食べてちょこちょこ飲む。22時半ごろ、お互いになんだか元気で帰りたくなくなって適当に宿を取った。YouTube見たりお酒を飲んだりしているうちに朝方になっていた。就寝。

❒ 7月26
11時過ぎごろ起床。チェックアウト12時だったので、結構がっつり寝られた。外で友人と合流。一蘭でも食べて帰るかと思って向かっているうちに無性にGINAのピザが食べたくなり、上野から西荻窪へ移動。定番のマルゲリータビスマルクを食べる。やっぱり美味しすぎるよな、ということで意見が一致。友人にはずっとおすすめし続けていた店だったので、やっと連れてくることができて、しかも気に入ってもらえてよかった。

外は昨日に続いて猛暑。とても暑い。もう少し涼しくなるまで喫茶店で過ごすことにする。どこへ行こうか迷ったが、友人は初西荻窪だったので、逆に最もエクストリームなところにしちゃおうと物豆奇へ。この店は、最初は独特の雰囲気に気圧されてしまったりもするが、馴染んでくるとどんどん居心地が良くなってくる。振り子時計のカチカチという音が心地良い。結構長居して喋った。自分たちの後から入ってきて真横の席に座ったお客さん、どこかで見たことがあるなぁと思っていたら、たまに曲を聴いていたミュージシャンの人だった。熱心に楽しそうにレーベルの人と話をしていた。会話のかなりの部分聞こえてしまった。

店を出て、ぼちぼちニシオギ散策開始。善福寺公園へ向かう。途中で寄った古着屋さんで1着ずつ購入。はじめ友人が見つけて迷っていたシャツを試着しているうちに欲しくなり、自分が買わせてもらった。かなり横取りに近い何かだ。歩いて善福寺公園に到着。夏ともなると善福寺公園の植物は茂りまくっていて、原生林のような雰囲気がある。一周してベンチに座って休んだり、踊ったりして遊ぶ。満喫したので、住宅街を散策しつつ坂の上のけやき公園へ向かう。善福寺川沿いを歩いていると、なんとカワセミ発見。すぐに飛んでいってしまった。この場所では前にも見かけたことがあるし、実は隠れ出没スポットなのかもしれない。公園内の善福寺池では一度も見たことがないのに。

歩いていると、みるみるうちに暗くなってきた。今回、この辺りの住宅街をたくさん歩き回ってみて初めて分かったことは、坂の上のけやき公園の大けやきを筆頭に、この一帯には明らかに「なるべく木を切らないようにする文化」があるということだ(具体的には西荻窪駅から善福寺公園までの間の住宅街の辺り)。道のかなり邪魔そうなところに大きな木が何本も生えたままになっていたり、家に木がもたれかかっていたり、葉が屋根や壁に被さっているのなどは当たり前で、屋根や壁を突き破るように生えている樹木も見られる。それから、日が差す隙間もないほど茂った樹木に囲まれた禍々しい雰囲気の家も何軒も見られる。道中の公園で一休みしていると、夕飯時になってきた。一蘭を食べられなかったので、ラーメン屋を探して行くことに。麺尊RAGEというお店に入り、軍鶏そばを食べる。店内はストリート系の兄ちゃんたちが集いそうなイケイケの内装。店員さんたちもそんな感じ。シンプルな醤油ラーメンだけど、香り豊かで美味しかった。解散して帰宅。

❒ 7月27
850分から歯医者。最近、歯茎の同じ部分からよく血が出ていて、気になっていたのだ。診てもらうと歯肉炎や歯周病まではいっていないけれど、ブラッシングの仕方が悪いらしい。歯磨きを頑張ることになった。指導された磨き具合が結構痛くて、本当にこれで良いのだろうかと思った。

近くのカフェに入る。夕方からまた用事があるので、それまで何をしようか考える。『わたしは最悪。』を観ることに。チケットを取って、新宿まで移動。12時半から上映。他人とは違う個性を発揮して自分だけの役割を見つけ、何かを成し遂げなければならないという極めて現代的なプレッシャーと葛藤。その中でもがき続ける人間を見つめ、皮肉り、ささやかに肯定する作品。選択肢と情報が多すぎて、あっちへふらりこっちへふらりと定まらない主人公ユリヤの姿は、カリカチュアライズされた現代のリアルな人間像そのものであった。そして、いくら選択肢が多くとも、決して選択することのできない不条理にぶつかるのが人生というものである。

この映画が描こうとしていることと同様に、映画自体も情報量が多く多層的で、フェミニズム#MeToo環境問題、ポリティカルコレクトネスからネットのバズまで、枚挙にいとまがないほど現代的なテーマやモチーフが頻出する。演出もビターだったりチャーミングだったりファンタジックだったりシリアスだったり、シーンごとに多彩なトーンで描き分けられている。そんな中、一貫して薄明るい光を投げかけ続けるオスロの空と街並みがとにかく美しい

夕方過ぎ、用事を済ませ帰宅。汗びっしょりなのでシャワーを浴びる。少しうたた寝焼きそばを食べた。夜、本読んで寝た。

❒ 7月31
起きてダラダラして、散髪。なかなか始められなくて、終わったら夕方前ぐらいになっていた。すっきり。久しぶりに軽く運動する。やっぱり使っていないと衰えるもので、普段よりキツく感じる。2つも面倒なことをこなしたので、今日は偉い。

夜、『リバー・オブ・グラス』を観る。なるほど、ひたすらパスティーシュといった感じで、映画が好きすぎる人の第1作目っぽい。と思っていたが、最後まで通して観てみると、実はゆるやかに型やジャンル性を解体していくような作品になっていて気持ち良かった。ライカート自身の「ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画」という言葉がしっくりくる。いろいろやって寝た。