2023年8月のこととか

❒ 8月5日
起きて、食べてセルフ散髪。軽く梳くくらいのつもりが思ったより切ってしまった。毎回そんな感じ。けど悪くはないと思う。ちょっと休んでから、夕方、運動。疲れた。

夜、『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』を観る。ジェームズ・グレイの幼少期(1980年のニューヨーク市クイーンズ区が舞台)をもとにした自伝的作品ながら安易なノスタルジーには浸らず、自身の経験した厳しい不条理と不公平を生々しく描き出している。そこには、アンソニー・ホプキンス演じる祖父アーロン(素晴らしいメンターっぷり)のような救いも、あたたかく美しい瞬間もたくさんあるが、グレイ自身の体験を正確に反映した一種の「トラウマ告白」のような色が強く、ある意味『リトル・オデッサ以上の切実さを持った作品になっている。主人公ポールの周りの大人たちが安易な無理解者としてではなく、複雑なパーソナリティを持った人物として描かれているのもリアルで誠実だ。ゆっくりと歩み出すラストシーンは映画の終わり方としてはあっさりしているものの、同時に力強さも感じられて素晴らしかった。

"過去"を誠実に描いた作品は常に"現在"をも映し出すもので、この映画からはロナルド・レーガンからドナルド・トランプに至るアメリカの倫理観の変化や、今日まで続く格差と差別に対する問題意識が浮かび上がってくる。そういう意味ではかなり政治的な作品ではあるが、メッセージを押し付けるのではなく、自身の生活に密接に関わり影響を与えていた政治のリアルを実体験として語ることで今の社会のあり方を問う。

本作はとりわけ自伝的な要素が強いものの、ジェームズ・グレイはどんなテーマで撮っても自身の作家性が強く滲み出てしまう作家である。思えば宇宙を舞台にした『アド・アストラ』だってパーソナルな映画だったし、父親との相剋やわだかまりが色濃く反映されているところも本作と共通している。

❒ 8月6日
昼食べて、なんとなくテレビでやっていた高校応援団の番組を観ていたら結構な時間になってしまった。何も考えずに出かける。電車を乗り継いで古着屋2軒回り、渋いストライプ柄のデニムシャツを購入。全然夏物じゃないけれど。他にもたくさん買おうかどうか迷ったものがあったが、やめておいた。やめておくことをしてみる日にしてみた。特に、めっちゃイケてるオールドGAPのスイングトップがあって、値段も安いしかなり迷ったのだけど、だいぶ汚れていたのでやめておいた。歳とともにだんだん汚れた服を避けるようになってきている。といっても、買ったデニムシャツも結構汚れていたのだけれど。

夕方、R Bakerでコーヒー飲みながらしばらくぼーっとする。せっかくだからバターロールも頼んでみた。そんなに混んでないし、安くて美味しいし、居心地も良い。良い場所を見つけた。店内にあった『パン語辞典』とか『FOOD DICTIONARY コーヒー』という本をパラパラ眺める。ちょっとだけ勉強になった。最寄りの駅まで電車で帰る。不完全燃焼気味なので、もう一軒近くの古着屋に寄ってみる。何も買わず帰宅。

夜、『カールじいさんの空飛ぶ家』を観る。思ったよりはるかに激しくてスリリングなアクション映画だった。はちゃめちゃなファンタジー展開の中に、人間・社会の現実的な問題や哲学的な問いがバランスよく取り込まれているのも良い。セリフ抜きにアニメーションだけでみせる冒頭10分間は名シークエンス。切なく胸に迫る。

❒ 8月12日
ほぼ何もしてない。

『東京公園』を観る。だいぶ奇妙な映画で良かった。全体的にポップでチャーミングなだけに余計不思議だ。タイトル通り東京の公園を巡るような物語になっているのも純粋に視覚的に楽しい。"見る"("撮る")と"見られる"("撮られる")の関係性(映画がよく自己言及的かつ象徴的に扱うテーマ)が重要なモチーフになっていることは分かるが、それ以外のことはほとんど分からなかった。ただ「物語」がそこにあるだけという気もするし、分からなくて良い気すらする。

❒ 8月13日
西荻窪。天気が悪い。昼、GINA行ってピザ。今日はなんだか特別美味しく感じて、初めて食べた時と同じくらいの衝撃を受けた。これを超えるピザにいまだに出会えていない。生地がうますぎる。そろそろパスタも食べてみたいのだけれど。そのまま大ケヤキを経由してototoharu;へ行く定番の散策コース。何も買わず。出てoftenへ行ってみるが、閉まっていて入れず。イトチへ少し寄ってからニヒル牛へ行って作品を見る。だんだん雨足が強まってきた。物豆奇でコーヒーフロート飲んでゆっくりしつつ、雨が弱まるのを待つ。天気が悪いので今日はあまりふらふら寄り道する気になれず、安定の店を巡った。

夜、適当に焼き鳥屋見つけて入って何杯か飲んだ。美味しかった。

❒ 8月14日
昼過ぎまでだらだら。夕方、渋谷。東京たらこスパゲティで素たらこスパゲティを食べる。量少なめだけど美味しい。ゆっくり味わって食べた。ヒカリエ9階のソール・ライター展(「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」)へ。めちゃくちゃミーハーだけれど「自分の好きなもののすべてがここに詰まっているのでは」と思うくらいソール・ライターの写真が好きだ。構図がかっこよすぎる。スライド・プロジェクションを見ていたら映画が観たくなってきた。『キャロル』とか。ポスターとポストカードを何枚か買った。写真集も欲しい。そのうち買いそう。

渋谷のエクセルシオールでしばらくゆっくりして、新大久保へ移動。夜、梁の家でスンドゥブチゲを食べる。お腹いっぱい。

❒ 8月15日
今日も遊ぶ。めちゃめちゃ遊んでいる。昼過ぎ、「ちょっと1時間くらいカラオケ」のつもりが自動延長し続けて2時間半経っていた。計画性がない。恵比寿へ移動。遅めの昼ごはんに、Burger Maniaでハンバーガーを食べる。店内の雰囲気が抜群にオシャレ。その後、桃のでっかいかき氷目当てにダカフェに行ってみたが、かなり列ができていてラストオーダー終わってしまっていた。計画性がない。

久しぶりにプラネタリウムでも行こうと思い立って、プラネタリアTOKYOの上映を予約。少し時間があったので、千疋屋でストロベリーアイスを食べた。日比谷駅まで移動。19時半の回に滑りこむ。いつぶりだろう、プラネタリウムなんて。心地よくて20回くらい寝そうになった。もうちょっとクラシックなプラネタリウムも行ってみたくなった。行こう。なんでもしてみよう。

❒ 8月19日
映画2本観た。運動した。

『対峙』。「銃乱射事件の被害者側家族と加害者側家族による対話」というと具体性も個別性も低くはないテーマであるかもしれないが、より普遍的な「痛みや憎しみとの向き合い方」や「赦しと人間同士の相互理解」について描いた映画としても見ることができ、なかなか興味深かった。テーマ性以外の部分で言えば、何より4人の緊迫感ある演技合戦が見もの。会合の舞台を教会に設定することで、未知のものとの対面がスピリチュアルな出会いと結びつけられているのも面白いと思う。

殺しのドレス』。スリリングでなかなか面白かった。潔いくらいのヒッチコックオマージュ(主に『サイコ』)に、ケレン味たっぷりの濃厚なデ・パルマテイスト。ケバケバしいエロティシズム。美術館内のシーンの流麗な撮影は『めまい』っぽくて良い。物語の本筋とは関係ない描写にやたら力が入っていたり、寄り道的なサスペンスが満載だったりしてなかなか変な映画だ。ラストシーンがこわすぎ。

❒ 8月20日
今日も西荻窪。10時に友人2人と集合。どんぐり舎へ行ったらまだ開いていなかったので、それいゆでしばらくゆっくりする。積もる話(?)があって楽しかった。昼飯時、安定のGINAへ移動。満席だったので連絡先を伝えて、ototoharu;まで歩くも今日は休業。しばらく一番街商店会の辺りをふらふら歩いたり、雑貨屋に入ったりして時間を潰す。連絡が来た。すでに3人ともあせだくだく。再びGINAへ向かう。美味すぎです。今日は調子が良かったので、ピザ3枚に加えて初めてのパスタも頼んでみた。初GINAの友人も「こんなに美味しいピザは食べたことがない」と言っていたのでやっぱり最強なんだと思う。出て、1時間半くらいカラオケ。壁にブラックライトでラッセンみたいな絵が浮かび上がる部屋だった。

友人1人用事で先にお別れ。だいぶ暑いけど2人で住宅街を眺めつつ善福寺公園まで歩くことに。寄り道したり、見つけた店に入ったりしながらゆっくり歩いた。川沿いも歩いてみたけれど、今日はカワセミを見つけることができなかった(過去2回善福寺川で発見したことがある)。善福寺公園着。汗どろどろ。ベンチで休んだり植物やセミを眺めたりしながら池の周りを一周した。帰り、バスで吉祥寺まで戻る。西荻窪行きに乗るつもりが間違って吉祥寺駅行きに乗ってしまった。帰路に着く。もう一人の友人とも別れて、マックへ行く。食べてしばらくぼーっとしていた。一人マックするとなんか長居してしまうんだよな。

❒ 8月26日
映画2本観て運動した。

『デュエル』。物語は、太陽の女王(ヴィヴァ)と月の女王(レニ)が石をめぐって争っているということ以外ほぼ分からなかった。でもきっと、それだけ分かっていれば充分。フィルムノワール×ファンタジーな感じがかなり独特な映画で、不思議と最後まで観ていられる。水族館のシークエンスの後、街中でリュシーがヴィヴァを追いかける一瞬のシーンの快楽は、『セリーヌとジュリーは船でゆく』の冒頭を彷彿とさせる。ジャック・リヴェットは移動シーンが良い。

ガメラ 大怪獣空中決戦』。ガメラもギャオスも好きだったことを思い出して。上映時間95分の中にぎっしり詰まった脚本とリアル路線の政治・防衛描写、自然光を用いた特撮は今見ても見ごたえがある。ギャオスが人間を喰う描写のおそろしさ、夕日をバックに折れた東京タワーに降り立つショットの美しさが印象的。2体が大気圏を突破するのにはちょっと笑ってしまった。当時の藤谷文子の演技がめちゃくちゃ拙い。

❒ 8月27日
暇すぎて15時くらいに一人でカラオケに行く。フリータイムで20時まで歌ったり本を読んだりして過ごす。環境にもよるけれど、個人的にカラオケボックスは読書が集中できる場所上位に入る。

夜、『北の橋』を観る。相変わらず変な映画。ジャック・リヴェットの街撮り移動シーン好きとしては、ロケ撮影でパリの街をひたすら巡るこの映画の映像は眼福だらけだった。パラノイア全開の登場人物が謎の陰謀に巻き込まれていく感じはちょっとピンチョンっぽい。

❒ 8月31日
休みをとって、友人3人とパーティーをした。初めてレンタルスペースというものを利用してみたのだが、思ったより簡単で良い。12時ごろ、新宿御苑前で友人1人と先に合流して、確認のCHATTY CHATTYへ。やっぱりかなり美味しい。チェダーチーズバーガーが正解な気がする。食べ終わり、もう2人と合流して、13時半に会場へ向かう。会場といっても普通のマンションの部屋なんだけれど。ジェンガをしたり、Switchでゲームをしたり、UNOをしたり、お菓子を食べたり、お酒を飲んだりしながら20時までみんなで過ごした。また特別な思い出が増えてしまった。

帰り道、誰かがカバンに入れたたけのこの里が散乱してベトベトに溶けてくっついて、カバンの中身が悲惨な状態になっていた。拭いても拭いても拭ききれない。みんなが同じ経験をするべきだ(してほしい)。そうすればきっと世界の平和につながるはず。